俺にはその歌は歌えない。 手に持った楽譜は、降り出した血の雨に濡れていて読めない。 歌おうとした喉は詰まって声が出ない。 こぼれた涙は白い楽譜の上で黒く変わって、 哀れみの歌を消していく。 俺には最初から、その歌を歌う権利なんかないんだ。 この雨を降らせているのも、 涙を降らせているのも、 最初から、俺自身なんだから。